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成長するチームになる!アジャイルな「ふりかえり」のすすめ

こんにちは、ソリューション技術部の中島です。 今回は、スクラムにおける三本の柱「透明性」「検査」「適応」のうち、「検査」と「適応」を担保するための重要なイベントでもある「ふりかえり」について、私たちのチームで実践している活動を紹介します。

ふりかえりとは

The Scrum Guideでは、ふりかえりについて以下のように記載されています。

スプリントレトロスペクティブは、スクラムチームの検査と次のスプリントの改善計画を作成する機会である。

~中略~

スプリントレトロスペクティブには、以下の目的がある。
• 人・関係・プロセス・ツールの観点から今回のスプリントを検査する。
• うまくいった項目や今後の改善が必要な項目を特定・整理する。
スクラムチームの作業の改善実施計画を作成する。

※レトロスペクティブ=ふりかえり のこと

また、アジャイル宣言の背後にある原則において、以下の原則が提示されています。

  • チームがもっと効率を高めることができるかを定期的に振り返り、それに基づいて自分たちのやり方を最適に調整します。

これは、アジャイルソフトウェア開発宣言において提示される以下の価値を実現することに繋がります。

  • プロセスやツールよりも個人と対話を、(価値とする)
  • 計画に従うことよりも変化への対応を、(価値とする)

私たちはスクラム開発を行っているわけではないですが、「ふりかえり」はチームが学習するうえで、欠かせない機会だと考えています。

やっていること

私たちのチームでは、週1回、ふりかえりの場を設けています。
そこでどのような活動をしているかを紹介したいと思います。

なお、実践するうえで、以下の書籍を参考にしています。
アクティビティについては記載されている通りでなく、工夫も必要ですが、考え方や進め方などとても有用な書籍です。

場の設定

まずは場の設定です。
ふりかえりに集中してもらうため、また自分で考えてアウトプットするトレーニングのため、私たちのチームでは「ゼロ秒思考」を試しています。

ゼロ秒思考とは…

ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング | 赤羽 雄二 |本 | 通販 | Amazon本文より引用

A4の紙に1件1ページで書く。ゆっくり時間をかけるのではなく、1ページを1分以内にさっと書く。毎日10ページ書き、フォルダに投げ込んで瞬時に整理する。それだけで、マッキンゼーのプログラムでも十分に教えていない、最も基本的な「考える力」を鍛えられる。深く考えることができるだけでなく、「ゼロ秒思考」と言える究極のレベルに近づける。

元々は個人の思考整理術のようなものですが、これをチームで実践することで各自が自ら考えるトレーニングとしています。
テーマはメンバー各自が持ち寄ったものを付箋に書いて箱に入れておき、くじ引き形式で決めています。 f:id:nakajiii:20180816131155j:plain

データを集める/アイデアを出す/何をすべきかを決定する

1週間を振り返って、うまくいった項目や今後の改善が必要な項目を特定・整理し、チームの作業の改善実施計画を作成します。

私たちのチームでは、先述の『アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き』で紹介されている「学習マトリックス(Learning Matrix)」を実施しています。
これはKPT(Keep/Problem/Try)に「感謝」を加えた4つの枠で構成されたアクティビティで、チームメンバーに対する感謝を示すことで、チームに対する貢献を明確にする効果があると思っています。

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まずは、「良かったこと・続けたいこと」と「変えたいこと」を各自に考えて挙げてもらい、挙がったものについて議論したうえで、それをもとに「新しいアイデア」「感謝したい人」を挙げるようにしています。

その後、上記の「新しいアイデア」について議論したうえで、何をするかを決めていきます。

何をするか決める際には「SMARTな目標(SMART Goals)」かどうか、という視点で話し合うようにしています。

「SMARTな目標」とは以下の5つの性質を持った目標を作ることで、何をいつまでにやるべきかを明確にするものです。

  • Specific:明確な
  • Measurable:計測可能な
  • Attainable:達成可能な
  • Relevant:適切な
  • Timely:タイムリーな

時間がないときはここまで議論を深められないときもありますが、次のアクションを決めて実行する際には重要なアクティビティです。

終了する

ふりかえりを終了する際には、今回のふりかえりはどうだったか、という視点で、「プラス/デルタ(+/Delta)」を実施しています。

プラスは「続けること」、デルタは「変更すること」で、ふりかえりを振り返ることによって、ふりかえりそのものを改善することに役立ちます。

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このときのふりかえりは、学習マトリックスではなく、事前に実施したチーム内アンケートの結果をもとに議論したため、それに関しての話が挙がっています。
また、ふりかえりミーティングにはお菓子を持ち込んで良いことにしているのですが、それに関する意見も挙がっています。

チームの決まりごと

今のところ決まりごとはそんなにないのですが、チームが学習するために以下のルールを設定しています。

  • 司会進行はメンバーの持ち回りとする
  • ふりかえりで何をやったか、どのように感じたか、ということを記録する係を毎回1名設定する

この2つのルールは、メンバー各自がミーティングに積極的に関わること、ミーティングを観察する習慣をつけてもらうことを目的としていますが、まだ取り入れたばかりで慣れない部分は多々あるように思います。

ふりかえりの効果

ふりかえりを毎週実施するということは、それだけチームの作業時間が減ることになります。
週の総業務時間は、1日8時間であれば、8時間×5日=40時間になりますが、そのうち2時間(私たちのチームのふりかえりは最大2時間の枠を確保しています)をふりかえりに充てると、

  • 2÷40×100=5%

1週間の業務時間のうち、5%ほどに相当します。

これだけのコストをかけるだけの効果があるのか、というところは私自身も常に意識しているところではありますが、今のところは「やるべきである」という結論に至っています。

では、どのような効果があるかというと、大きなところでは以下の3点だと思います。

  • チームが自分たちの問題に気付き、自分たちで解決する方法を考えるようになる
    • その結果、メンバーの当事者意識が高まり、問題の解決も早く、より効果的なものになる
  • チームに失敗から学んで改善する文化が定着する
    • その結果、同じ失敗を繰り返さないように注意し、改善していくようになる
  • 自分の考えをアウトプットし、議論する場があることで、対話の質が高まる
    • その結果、日々の業務においても積極的にコミュニケーションを取れるようになる

上記の効果はすぐに表れるものではないので、継続することが重要です。
スクラムをやっていればスプリントごとにふりかえりミーティングを実施することが必須ですが、スクラムをやっていなくても、定期的にスケジューリングして、どんなに忙しくても必ず実施するようにすることで、ふりかえる習慣をチームに定着させることが重要です。

今後に向けての課題

ここまでは良い面を中心に紹介してきましたが、課題がないわけではありません。
むしろまだまだ課題は多いと個人的には感じています。

データを収集するフェーズが弱い

前述の「学習マトリックス(Learning Matrix)」は、『アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き』では「アイデアを出す」フェーズのアクティビティとして紹介されています。

KPTや学習マトリックスは、「こういうことがあった」という意見を挙げるタイミングで「Keep(続けたいこと」「Problem(問題点・変えたいこと)」というカテゴリ分けをしますが、まずは実際の事象(事実)を様々な視点から観察されたうえで、「続けたいこと」なのか「変えたい」ことなのか、あるいはそのどちらでもない(そこまで重要なことではない)のかを議論するべきではないかと考えています。

具体的な例を示します。

私たちのチームではふりかえりの情報を管理するためのツールを最近変更しました。
この新ツールですが、メンバーによって意見が分かれています。新ツールが良いと感じているメンバーは「新ツールを使う」ことを「続けたいこと」に挙げ、新ツールが使いづらいと感じているメンバーは「新ツールを使う」ことを「変えたいこと」に挙げるでしょう。
両方の意見が挙がればそこから議論もできますが、もし意見が分かれているのにどちらかの意見しか挙がらず、しかも反対の意見の人がスルーしてしまった場合、意に沿わない決定になってしまうこともあり得ます。

この例の場合は、まず「新ツールを使い始めた」事実のデータと、それに対する感情のデータ(使いやすい、使いづらい)を集めたうえで、「積極的に続ける」のか「積極的に変える」のか「現状維持」なのかを議論すべきだということです。

これを実現するために、「データを収集する」アクティビティをまず実施し、1週間で何が起きたのか、何を感じたのか、だけを挙げたうえで、「続けること」「変えること」を議論するようにミーティングを構成することを検討しています。

脱線や早すぎるフォーカスの発生

議論の最中に脱線してしまったり、アイデア出しのタイミングで1つのアイデアにフォーカスして深掘りし過ぎてしまったり、ということがまだ発生しています。

ふりかえり自体の目的・ゴールだけでなく、各フェーズ(データを収集する→アイデアを出す→何をすべきかを決定する)の目的・ゴールも明確にして共有する必要があると考えています。

個人の課題からチームの課題へ昇華できていない

思考や感情は個人のものなので、最初に挙がる「続けたいこと」「変えたいこと」は個人の意見です。
ですが、チームのふりかえりなので、そこから「チームの課題」として考える必要があると考えているのですが、今のところ、なかなか「個人の課題」レベルから抜け出せていないように感じます。

個人の課題をチームとしてどのように捉え、チームとしてどのように解決していくか、という観点での会話はまだあまり出来ていないというのが正直なところです。

課題のひとつめに挙げた「データを収集するフェーズが弱い」ところにも関連してくると思いますが、各自が観察したこと、感じたこと、を挙げたうえで、それがチームにとってどのような影響を与えているのか、チームにとっての課題なのかを考える必要があると思います。

このような課題をチームで話し合い、改善していくためにも、ふりかえりは私たちにとって重要な時間と言えるでしょう。

おわりに

以上、私たちのチームで実践しているふりかえりを紹介してきましたが、私が主張したいことを以下にまとめます。

  • ふりかえりはチームの状況を整理し、次のステップへ進めるために有用な時間
  • 毎週ふりかえることで、早く気付き、改善する習慣を根付かせることが可能
  • 学習するチームとなるために必要なプロセス

スクラムとかアジャイルとか知らない、やっていない、というチームでも、ふりかえりを実施することでチームの成長が促進されるはずです。
ただし、ふりかえりと言いながら、問題点を挙げて終わってしまってはせっかくの時間も無駄になってしまう可能性があります。

大事なのは、改善するマインドをチームに根付かせること、そして、次のアクションをしっかりと決めることだと思います。

とりあえずやってみて検証し、検証した結果をさらに次に活かす

という精神がチームをさらなる高みに前進させると信じています。