ForgeVision Engineer Blog

フォージビジョン エンジニア ブログ

VR落とし穴制作ログ

VR事業部の三原です。
今回「ロンハー☆VR落とし穴」の制作に関わらせて頂きましたので、その制作ログを紹介したいと思います。

概要

「ロンハー☆VR落とし穴」とは

「ロンハー☆VR落とし穴」はテレビ朝日様で2019/07/13~8/25に開催されていたイベント「テレビ朝日・六本木ヒルズ夏祭り SUMMER STATION」のコンテンツのひとつです。
TV番組「ロンドンハーツ」のスタジオを弊社が特許を取得した「歩ける全天球動画」の技術にて立体化することで、VR空間内のスタジオを実際に歩き、同番組の定番ネタ落とし穴実際に落ちる体験が可能なアトラクションとなりました。

f:id:fv_mihara:20190731201125j:plain

「歩ける全天球」とは

通常の全天球動画は360°自由に見渡すことはできますが、映像内を自由に移動することはできません。
歩ける全天球動画」では、360°動画と立体形状を組み合わせる技術を用いることにより、実写映像の中を「リアルスケール」で「自分の意志で歩ける」ことを可能にしています。

f:id:fv_mihara:20190801160710p:plain

ステレオパノラマやフォトグラメトリーとは異なる技術で、リアルなVR空間を実現できます。

立体形状の作成

今回制作した「ロンハー☆VR落とし穴」では実際に歩くシーンと、落とし穴の中のシーンで「歩ける全天球動画」の技術が使われています。

動画について

今回の動画撮影はHOME360様にご協力頂いています。
説明・案内シーンは4Kの高解像度映像を両眼視差立体視にしたステレオパノラマ動画となっています。また、視点の高さに違和感が無いよう身長によって再生する映像を変更する工夫がされています。
実際に歩くシーンでは16Kの超高解像度テクスチャでスタジオを立体化しています。
同シーンで正面に立っている演者さんたちの映像は、実はパネルに動画を張り付けているだけなのですが映像は背景をクロマキー処理し、違和感なく実際にそこに立っているかのように見せています。

実装方針

【シーン0:待機画面】
 ・ロゴ表示
 ・ボタンを押して開始

【シーン1:案内説明】
 ・ステレオパノラマ動画で案内動画を再生
 ・途中にCM動画を再生
 ・説明が終わると次のシーンへ

【シーン2:実際に歩く】
 ・歩ける全天球の静止画を表示
 ・演者の動画をパネルに表示
 ・ボタンを押して落ちる
 ・床が開き落ちる演出
 ・落ちると次のシーンへ

【シーン3:落とし穴の中】
 ・歩ける全天球動画を再生
 ・スポンジとの当たり判定
 ・動画が終わると次のシーンへ

【シーン4:終了画面】
 ・ボタンを押して最初のシーンへ

落ちる演出の作成

落ちる演出の視覚的情報は以下の組合せで作成しています。
・床が開くアニメーション
・煙パーティクル
・重力

床が開くアニメーション

両開きの床を子オブジェクトにして、親オブジェクトにアニメーションをつけています。

煙パーティクル

Particle Shaders Vol. 1パーティクルを改良して使用しています。

assetstore.unity.com

f:id:fv_mihara:20190731211307g:plain

重力

床が開いたタイミングで床の欠片を表示し、欠片とカメラに重力を付けて自由落下するようにしています。欠片のサイズによって空気抵抗も加味しています。

現地での体験では、これらの視覚情報に加えて実際に床が数センチ下がり風を当てる事によって落下感が増しているため体験すると大の大人でも、声が出るくらいびっくりするリアルな体験ができるようになっていました。

落とし穴内の事前検証

今回の撮影は演者さんとスタジオのスケジュールの都合上一度しか撮影する機会がありませんでした。そのため、どのような位置で撮影するのが最適なのかを事前に知る必要がありました。
そこで今回はUnityで落とし穴の中を再現して、どう見えるのかシミュレーションしました。

まずはCubeで落とし穴の中の壁と床を作り、落とし穴の中にカメラを置きます。その次に演者さんに見立てた3Dキャラクターを置きます。
するとこのようなシーンが出来上がります。

f:id:fv_mihara:20190930170041p:plain

そしてこのシーンを全天球撮影し、撮影本番で落とし穴の中に置くカメラの最適な高さを検証しました。
さらにこのシーンでVRヘッドマウントディスプレイを被ってプレイヤーの目線の最適な高さも検証しました。

撮影当日は実際に落とし穴の中に入ってシミュレーションと相違がないかを確認しました。

結果として一度きりの撮影を問題なく進められ、撮影した素材を使って落とし穴の中をバッチリ再現することが出来ました。

スポンジの作成

落とし穴の中のスポンジはキューブにテクスチャを貼り、当たり判定をつけて実装しています。このため、落とし穴の中を動くとスポンジも動くようなっています。

最後に

「ロンハー☆VR落とし穴」は開催期間中、大変多くの方が体験され90分待ちの列が出来るほど大人気のアトラクションとなっていたようです。非常に多くの方に体験して頂き本当にありがとうございました。

「歩ける全天球動画」、または各種VRコンテンツの制作依頼は弊社問合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

f:id:fv_mihara:20190829111730j:plain