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Azure Migrateを使ったVM移行 (1)

こんにちは、プラットフォームビジネス事業グループ 浜口です。
今回はAzure Migrateについて紹介したいと思います。

検証の目的

Broadcom社によるVMwareの買収に伴うライセンス変更によって、VMwareから他社サービスへの移行を検討する企業が増えているかと思います。

今回は移行先候補の一つでもあるAzure環境に移行するサービス「Azure Migrate」を使ってVMware環境からVMを移行し、移行の手順や要件などを確認していきたいと思います。

Azure Migrateとは

Azure Migrate はオンプレミスのサーバーやデータベース、Webアプリケーション、仮想デスクトップ インフラストラクチャなどのリソースを Azure に移行するために提供されているサービスです。Azure Migrate を利用すると、以下のような移行や移行のためのオンプレミス リソースの評価と検証が行えます。

  • サーバー、データベース、Web アプリ:
    Web アプリと SQL Server インスタンスを含むオンプレミスのサーバーを評価し、それらを Azure に移行する。

  • データベース:
    オンプレミス SQL Server インスタンスとデータベースを評価して、Azure VM または Azure SQL Managed Instance 上の SQL Server、あるいは Azure SQL Database に移行する。

  • Web アプリケーション:
    オンプレミスの Web アプリケーションを評価し、それらを Azure App Service と Azure Kubernetes Service に移行する。

  • 仮想デスクトップ:
    オンプレミスの仮想デスクトップ インフラストラクチャ (VDI) を評価し、Azure Virtual Desktop に移行する。

  • Data:
    Azure Data Box 製品を使用して、大量のデータを迅速かつコスト効果よく Azure に移行する。

Azure Migrateに統合されているツールは以下になります。

ツール 評価と移行 詳細
Azure Migrate: Discovery and Assessment SQL および Web アプリを含むサーバーの検出と評価 Azure への移行の準備として、VMware VM、Hyper-V VM、および物理サーバー上で実行されているオンプレミス サーバーを検出して評価します。
移行およびモダン化 サーバーの移行 VMware VM、Hyper-V VM、物理サーバー、その他の仮想サーバー、パブリック クラウド VM を Azure に移行します。
Data Migration Assistant Azure SQL Database、Azure SQL Managed Instance、または SQL Server を実行する Azure VM に移行する SQL Server データベースを評価します。 Data Migration Assistant は、SQL Server を評価するためのスタンドアロン ツールです。 移行を妨げる可能性のある問題を特定するのに役立ちます。 サポートされていない機能、移行後に役に立つ新機能、データベースの移行の適切なパスが明らかになります。 
Azure Database Migration Service オンプレミスのデータベースを、SQL Server を実行している Azure VM、Azure SQL Database、または SQL Managed Instance に移行します。 Azure Database Migration Service は、複数のデータベース ソースから Azure データ プラットフォームへのシームレスな移行を最小限のダウンタイムで実現できるように設計された、フル マネージド サービスです (オンライン移行)。
Web App Migration Assistant オンプレミスの Web アプリを評価し、Azure に移行します。 Azure App Service Migration Assistant は、Azure App Service に移行するためにオンプレミスの Web サイトを評価するスタンドアロン ツールです。
Azure Data Box オフライン データを移行します Azure Data Box 製品を使用して、大量のオフライン データを Azure に移動します。 

移行の流れについて

VMware VMを移行する時の流れは以下になります

No 項目 概要 備考
1 検出 VMware環境にAzure Migrate アプライアンスを配置することで、VMware環境のサーバーのリストを取得する。
2 評価 Azure VM への移行に備えて、検出したVMに対してVMサイズやコストなどを評価する。
評価には以下2種類ある。 オンプレミスに基づいた評価:オンプレミスのVMサイズに基づいてAzure VMサイズを評価する。
パフォーマンスベースの評価:CPUとメモリ使用率データに基づいてAzure VMサイズを評価する。
3 移行 VMのレプリケート アプライアンスで検出したVMの初期レプリケーションを開始できる。
初期レプリケーション中にVMスナップショットが作成される。
初期レプリケーション完了後は、定期的に差分レプリケーションが開始される。
テスト移行 テスト移行では、レプリケートされたデータを使用して Azure VM を作成することによって、移行がシミュレートされる。
テスト移行を実行しないで移行を実行することも可能。
各VMで最低1回はテスト移行することをMSは推奨
移行 移行を実行すると、前回のレプリケーションとの差分レプリケーションが開始される。
移行完了後、移行の完了を選択することでレプリケーションの設定を削除できる。

移行概要

VMware VMの移行にはエージェントレスとエージェントベースの2種類の移行があります。
エージェントレスの移行はVMに何もインストールすることなく移行します。VMwareのみの環境で移行が可能となっています。エージェントベースの移行はVM上にエージェントをインストールする必要があり、vCenterへのアクセス権が無い場合や、VMware VM以外の物理サーバなどを含んだ環境の移行が可能となります。

今回はVMware環境のVMを対象とするため、シンプルなエージェントレスの方式で移行します。

以下の流れで移行を実施します。

①Azure環境にてAzure Migrate用のプロジェクトを作成し、 Azure Migrateアプライアンスをダウンロードする。
②VMware環境にアプライアンスサーバーを作成する。
③移行対象のサーバーを検出し、評価を実施する。
④レプリケートを実施してVMを移行する。

移行概要

検出

VMware VMを検出するために以下の手順を実施していきます。

アカウントの準備

以下それぞれのアカウントを準備します。

  • Azureユーザーアカウント
    • 共同作成者または所有者のRoleとユーザーアクセス管理者のRole
    • Microsoft Entra アプリの登録が可能になるよう、アプリケーション開発者ロールをアカウントに割り当てる

  • vCenter Server にアクセスするためのアカウント
    • vCenter ServerにアクセスするアカウントにRead-onlyのロールを割り当て、Read-onlyのロールには検出/移行に必要な特権を割り当てていること(必要な特権に関してはMicrosoftのAzure Migrate 発見/移行のドキュメントからvCenter Server にアクセスするアカウントについての記載を確認してください)

  • 移行するサーバーにアクセスするためのアカウント
    • Windows サーバー:管理者アクセス許可を持つアカウント
    • Linuxサーバー: ls および netstat コマンドを実行できるアクセス許可を sudoユーザーアカウントに付与
Azure Migrate プロジェクトの設定

以下の手順でプロジェクトを作成します。

①Azure portal で、 [すべてのサービス] を選択し、[Azure Migrate] を選択します。
②[移行の目標] で、[サーバー、データベース、および Web アプリ]のオプションを選択し[プロジェクトの作成] を選択します。
③[プロジェクトの作成] で、Azure サブスクリプションとリソース グループを選択します。 リソース グループがない場合は作成します。[プロジェクトの詳細] を指定し、[作成] を選択します。

プロジェクトの作成

Azure Migrate アプライアンスの設定

以下の手順でAzure Migrate アプライアンスを設定します。

①プロジェクト キーを生成する

  1. [移行の目標] で、[サーバー、データベース、および Web アプリ]>[Azure Migrate: Discovery and Assessment]>[検出]>[アプライアンスを使用する] の順に選択します。
  2. [お使いのサーバーは仮想化されていますか?]>[はい。VMware vSphere Hypervisor を使用します] の順に選択します。
  3. Azure Migrate アプライアンスの名前を指定し、 [キーの生成] を選択します。
  4. 作成された"プロジェクト キー"をコピーします。 キーは、アプライアンスの構成時にアプライアンスの登録を完了するために使用します。

検出画面

②OVA テンプレートをダウンロードする

③アプライアンス サーバーを作成する

  1. vSphere Client コンソールで、アクション> OVF テンプレートのデプロイ の順に選択します。
  2. OVF テンプレートのデプロイ ウィザードで、 [ソース] を選択して OVA ファイルの場所を入力します。
  3. その他必要な設定を確認し、 [完了]を選択します。

OVFテンプレートのデプロイ

④アプライアンスを構成する

  1. vSphere Client でコンソールを開き、アプライアンスの言語、タイム ゾーン、パスワードを選択または入力します。
  2. アプライアンスに接続できる任意のコンピューター上でブラウザーを開きます。 次に、アプライアンス構成マネージャーの URL https://appliance name or IP address:44368 を開きます。

⑤前提条件の設定とアプライアンスの登録

  1. サーバーがインターネットにアクセスできること、アプライアンス上の時刻がインターネットの時刻と同期していることがアプライアンスによって確認されます。
  2. ポータルからコピーしたプロジェクト キーを貼り付け、[検証]を選択でアプライアンスでキーが検証され、アプライアンス上のすべてのサービスが最新バージョンに更新されます。
  3. [ログイン] を選択し正常にサインインした後、アプライアンスの登録が開始されます。
    アプライアンスの登録

  4. Install VDDK (VDDK のインストール) : VMware vSphere Virtual Disk Development Kit (VDDK) がインストールされていることがアプライアンスによって確認されます。 VMware から VDDK をダウンロードします。 ダウンロードした zip ファイルの内容をアプライアンスの指定のパス C:\Program Files\VMware\VMware Virtual Disk Development Kit に展開します。

※a.~d.までの手順でエラーが発生する場合は、アプライアンスサーバーで起動していないサービスがないか確認してください。

VDDKの展開先
VDDKの確認

検出

以下の手順でVMを検出します。

①vCenter Server の詳細を指定する

  1. [資格情報の追加] を選択してアプライアンスで使用される vCenter Server アカウントのユーザー名とパスワードを追加します。フレンドリ名は任意の名前で問題ありません。
  2. [検出ソースの追加]を選択して、vCenter Server の IP アドレスまたは FQDN を追加します。
  3. 追加された vCenter Server への接続の検証が試行されます。 ソース テーブルに検証状態が表示されます。

検出ソースの追加

②検出されたデータを表示する

  1. Azure portal でAzure Migrate に戻り、[更新] を選択して、検出されたデータを表示します。
  2. 検出されたサーバー数を選択して、検出されたインベントリを確認します。

検出済みサーバーにはvCenter ServerやAzure Migrateアプライアンスも含まれていました。

検出済みサーバー

今回はVMware VMの検出まで実施しました。
次回はVMの評価と移行を実施する予定です。