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re:Invent 2022 で生の英語セッションに挑む

こんにちは、クラウドインテグレーション事業部の遅れて来たルーキー八木です。

世界のAWSエンジニアたちにとっての聖地巡礼、それはUSAラスベガスで開催される re:Invent の現地参加ではないでしょうか。 今回、わたしはAWSエンジニア歴2年目に満たない身でありながら現地参加の機会を頂くことが出来ました。会社には感謝しかございません! 初参加ということで全ての体験が新鮮で貴重なものでしたが、今回は現地での英語セッションをテーマにご報告したいと思います。

さて日本のAWSエンジニアにとって、re:Invent の現地参加には仕事の日程調整やコロナウィルス問題など様々な壁があると思いますが、その一つに英語もあるのではないでしょうか。確かに、現在ではかなり早いタイミングで日本語訳付きのアーカイブ動画が配信されたり、AWSJさんの日本語の解説動画により詳しい内容を即座に把握できたりと、言語の壁は以前よりグッと下がっているのも事実です。ただ、現地でセッションに参加するとなると、スピーカーの「生の英語」と対峙する必要性はどうしても発生しますし、それをダイレクトにインプットするというのも現地で参加する醍醐味かなと思う訳です。

今回はクラウドインテグレーション事業部きっての英語大好きおじさんの八木が、様々な種類のセッションの英語リスニングに挑んで参りましたので、そのリスニング難易度を勝手にレビューしたいと思います。re:Invent を英語のまま理解したいという物好きな皆さんの参考になればと思います。セッションの内容は基本的には細かくふれませんので、気になった方は YouTube のリンクでチェックしてみてください。

まず、re:Invent で開催されるセッションの種類はどんなものがあるかがおさらいしてみましょう。改めてみるとかなり種類ありますね。

  • Keynote
  • Leadership Session
  • Breakout Session
  • Builders' Session
  • Bootcamp
  • Chalk Talk
  • Workshop
  • Theater Session
  • Lightning Talk
  • Lab
  • Gamified Learning
  • Community Activities
  • Conference Services
  • Dev Chat
  • Geo Talk
  • Geo Breakout

全ての種類のセッションに参加できればよかったのですが、スケジュールや予約枠の都合で参加できたのは、ハイライトした6種類のみでした。なので、今回はこの6つについてどんな雰囲気のセッションかも含めて英語リスニングに挑んだ場合の難易度を順番に見ていきたいと思います。

Keynote

CEOのAdam Selipsky氏や、CTO/VPのDr. Werner Vogels氏などAWSのリーダー陣が今後の方向性について語ったり、最新のサービスを発表する言わずとしれた re:Invent の目玉イベントの一つです。数千人収容はできるであろうre:Invent 内でも最大規模の会場で行われ、開始前には前座のバンドの演奏があったり、巨大スクリーンでスピーカーが常に表示されていたりと、さながらアーティストのライブのような雰囲気の中で実施されるのが Keynote です。参加者数も最も多く、開始一時間くらい前にはすでに入場待ちの行列ができている状態で、全員が会場入りするまで数十分かかるような規模感です。また、会場に入ってからもスピーカーが登場するまで、観客のボルテージが上がっていく感じも独特のものがあり、他のセッションとは一線を画す雰囲気です。

the venue of the keynote
Keynote会場と前座バンドの演奏

わたしが受けたセッションの中では、Keynoteのリスニングが一番簡単でした( Dr. Werner Vogels 氏は例外なので後述)。re:Invent のセッションは技術的な難易度を Session Level としてスコアリングしていますが、Keynoteのレベル分けは None ということで、聴衆のレベルを限定しないかたちをとっていることからもその難易度がわかります。

session level
Keynoteのセッションレベル

話す内容も様々な例えを用いて理解しやすいような工夫がされていたり、できるだけ平易な言葉を使ったスピーチになっていたり、話すスピードもゆっくり、センテンスも短い印象です。自分が実際に会場で聴いたのは以下の4つですが、上3つのスピーカーの英語はそのまま聴いても、発音が聞き取り易く、IT業界歴の浅い自分でも概ね理解できる語彙で話されていた印象です。なので、まずは Keynote の英語を理解するというのがre:invent の英語チャレンジの第一関門ということになりそうです。 ちなみにKeynote会場は、同時通訳部隊が配置されており、写真下のようなレシーバーで日本語含む多言語の同時通訳を聞くことができます。ただし、受信機は数に限りがあるみたいなので、欲しい人は早めに会場に並んでおく必要があるので注意です。

simultaneous_translation_receiver_distribution
同時通訳受信機は会場の端っこで配布している。早い者勝ち!

Monday Night Live with Peter DeSantis 

リスニング難易度☆

youtu.be

Security、Low Cost、High PerformanceというCloud Computing がフォーカスすべき3大要素を軸に話を進める中で、新しいNitroチップ やそれを使った新しいインスタンスタイプなどの発表がありました。聞き取りやすい発音とスピード、文章も短めで区切って話してくれるのでとっても分かりやすかったです。Computingの性能を説明するのに多少の技術的な用語は使われていますが、IT業界で働いている方には馴染みのある単語ばかりなので特に引っかかることはないでしょう。

Adam Selipsky Keynote         

リスニング難易度☆ youtu.be

前半はデータ関連、後半はセキュリティ関連からHPCなど幅広い分野にわたるスピーチでしたが、こちらも難しい単語は使われておらず、ゲストスピーカーの方を含め発音のクセが少なくとても聞き取りやすい英語でした。普段何気に使っているサービス名も、こう言う時に正しく英語で発音されるとハッとすることがありますね〜。例えば、MySQL=”マイシークォゥ”、Athena=”アセィーナ”とか。

AWS Partner Keynote with Ruba Borno  

リスニング難易度☆☆ youtu.be 弊社のようなAWSパートナー企業向けのKeynoteで、AWSパートナー企業がAWSを活用してエンドユーザーの課題をいかに解決しているかなどの具体的事例などを中心に展開されます。技術的な内容というより、ビジネス寄りの内容になっており、上述2つのKeynoteに比べると、少し難しい言い回しを使っていたり、話すテンポが若干早い印象です。ゲストスピーカーのトークも対談形式であり普通に会話するテンポで話されるのでちょっと会場で聞き取るのは難しかったです。

Dr. Werner Vogels Keynote

リスニング難易度☆☆☆

youtu.be

映画マトリックスのパロディからはじまったDr. Werner Vogels のKeynoteですが、それまでKeynoteの英語を聴いてきて、おっ、意外と理解できるじゃあないかと図に乗っていたところでその自信を完全に打ち砕かれたのが、彼のKeynoteです。それまでは、同時通訳に頼らずに聴きとってやると鼻息荒く挑んできたのですが、彼のKeynoteはほとんど聞き取ることができず、会場では終始同時通訳のお世話になるかたちとなりました。ただこれは私に限ったことではなく、会場で同時通訳されているプロの方ですらもかなり手こずっていたようで、聴いていても所々訳しきれない箇所があったようです。まずDr. Werner Vogelsがしょっぱなから連発する"synchrony"と言う単語。これをキーに話が進んでいくのですが、まずこの単語の意味がちょっと分かりにくかったです。手持ちのスマホのWISDOM英和辞典をひいたところ、なんと記載なし!synchronicity(同時性)、synchronous(同期的)といった単語は馴染みがあったので、そこからなんとなく意味を推察しながら聴くかたちとなりました。後で調べたところ、synchrony (物事が同時に起こった時に存在する関係 by 英英辞典、同調性 by Weblio英和辞典)といった意味であり、想像してた意味とは遠くなかったものの、こういう概念的な単語のニュアンスを理解するのは非常に難しいですね。あと最大の特徴として、なにより発音が聞き取りにくかったです。イメージでいうとプロレスラーの試合後インタビューを聞いてる感じでしょうか。かなり精度が高いYouTube自動字幕生成でも以下のようなミスが発生していることからも聞き取りにくい英語だったかなと言う印象です。

transcription_failure
"event-driven" が "inventory of ~" として認識されている

Leadership Session

リスニング難易度☆☆

雰囲気としてはKeynoteと基本的に同じで、大きな会場で幅広い層の聴衆向けといった内容で、話すスピードはゆっくりめ、語彙的にもそこまで難しいものはなかった印象です。Session Levelで見てみても、100 - Foundational ~ 200 - intermediate なので技術的な難易度も低めであったことがわかります。私が受講したセッションではKeynoteと同様に同時通訳サービスが提供されており、そうした面でもより広範囲へのアプローチを目的としたセッションと考えられます。私が受講した Leadership Session は"Automotive reinvention"、"Kubernetes virtually anywhere for everyone" の2つでした。前者では、自動車産業のトレンドとなっているコネクテッドカーやSDV(Software Defined Vehicle)の話から実際AWSを活用してエンドユーザーがゲストスピーカーとして話したり、内容的にも非常に充実したものでした。後者の方は若干スピーカーの話すスピードが速かったのと、200 - intermediateだったことから前者にくらべると少し技術的な内容を伴うものでしたが、両セッションとも話される内容自体はそこまで難しくなかったという感想を持ちました。自分が受講した Leadership Session がこの2つだけだったので、英語リスニング難易度の判断は限定的になってしまいますが、YouTube のアーカイブ動画で他の Leadership Session を見る限り難易度的には似たようなレベルと感じましたので、これもKeynote についでそのままの英語でも挑戦しやすいレベルと言えるでしょう。

the venue of the Leadership session
Leadership session 会場の様子

Breakout Session

リスニング難易度☆☆☆☆

このあたりのセッションから、手加減なしの英語のシャワーを浴びることになります(笑) Breakout Session はセッションの総数で数えてもイベント全体で1070もあり(次に多いChalkTalkが585)、自分が受けたセッションも Breakout Session の割合が最も多かったです。このことから、Breakout Session の英語リスニングを制さずして reinvent の英語を制することはできないと言ってもよさそうです。ところが、この Breakout Session のスピーカーの英語がなかなか手強い。Keynote はほぼ原稿ありきのスピーチといった趣でかなり洗練された言葉で話されているのに対し、Breakout Sessionではおそらく話す内容は決まっていてるもののセンテンス自体はアドリブ、つまり口語に近いかたちで話されることからスピードや使われる語彙などもKeynoteと比べると一つ二つレベルが上がる印象です。口語のため文章の切れ目も曖昧で、and ~and~といった感じで文の途切れがなく話が続くケースが多く、英語を聞き取れても、その文意を理解するスピードが追いつかないといったことが頻繁に発生しました。自分が Breakout Session に挑んだ限りでは、表示されるスライドで内容を補ったとしても、現場で理解できたのは半分程度だったかなと思います。さらに悪いことに、Breakout Session では同時通訳の提供がありません!むしろこういう難しいセッションこそ通訳が欲しい気もしますが、上述のようにセッション総数が1000を超える上に、技術レベルも 最高の 400 - Expert まであることから現実的に同時通訳の提供が厳しいのは致し方ないところです。一方良い点としては、YouTubeのアーカイブ動画がAWS Events のチャンネルで1~2日後には公開されるということです。全てのセッションが公開されているか確認しきれてませんが、少なくとも自分が受けたセッションは全てYouTubeで視聴可能であり、自動生成の字幕もつくので、それで内容は復習できそうです。 後で他の参加メンバーに聞いたのですが、こういう時は音声文字起こしツールで話している内容をテキスト化し、それを自動翻訳にかけて理解するといった技を使っているそうです。そんな手があるとは(笑)

当然セッションの技術レベルに応じて語彙的にも難しい単語が出てきたり、概念的な内容になったり、セッションを理解する難易度は上下するとは考えられます。スピーカーがネイティブな英語話者かノンネイティブの英語話者かによっても聞き取りやすさはかなり差があるのも事実ですが、総じてKeynote、Leadership Session と比べると内容を理解するのは格段に難しくなっており、自分は YouTube のアーカイブを字幕付きで見直すことで全体を理解できた感じです。

scene from the Breakout session
Breakout session会場の様子

Chalk Talk

リスニング難易度☆☆☆☆☆

Chalk Talk とは文字通りチョークで黒板に書きながら進むセッション(実際はホワイトボード)で、スピーカーが一方的にプレゼンをするのではなく、参加者の質問を受けスピーカーがホワイトボードを使って説明しながら進めるといった言うなれば学校の授業スタイルのセッションです。自分はこのスタイルのセッションを合計4つ取りました。感想から言うと、受けたセッションによって理解できた量にかなり差がありました。Chalk Talkとしては初めての参加となった"Build applications with ops in mind using ISTM and AWS"というセッションは正直さっぱりわからず、とにかくスライドの写真を取ることに終始するかたちになってしまった一方、その次に受けた"Refactoring Serverless"というセッションでは同じセッションレベルだったにもかかわらず(2つとも技術レベルは300-advanced)内容が結構理解できたのに加え、英語のリスニング的にもそんなに苦労することなく概ね話している内容は理解できました。 原因としては前者はセッションの内容的に自分の背景知識がほとんどない状態で挑んでしまったこと、スピーカーがインドの方で英語の発音にどうしてもクセがあって聞き取りにくかったことなどがあったのに対して、後者は普段から親しんでいる内容だったこと、ネイティブスピーカーの英語で聞き取りやすかったことなどが考えられました。その後うけた2つEKS関連のChalkTalkがあるのですが、これらは英語が聞き取れないというよりは内容が難しくて理解が追いつかなかったという側面が強かったです。結論からいうと、Chalk Talkに挑むには Breakout Session レベルの英語が聞き取れればリスニング力としては十分である一方、技術的にそれなりに精通した分野でないとセッションの内容についていくのが難しいというところでしょうか。

scene from the Chalk talk
Chalk Talk 会場の様子

Workshop

リスニング難易度☆☆

これはいわゆるハンズオンです。大きめの会場にLaptop持参で集まり、スピーカーがハンズオン概要を説明した後は、ハンズオン専用ウェブサイトに案内され、そこで説明を読みながら自分のペースで進めていくスタイルとなります。最初にあるガイダンスで話される英語自体はBreakout Session と同程度のフランクさではありますが、あくまでハンズオンの説明が主体で高度な内容を話す訳ではないので、理解に苦しむことはあまりなさそうです。ハンズオン開始後、わからない点があれば巡回している主催者側 エンジニアに英語で質問するかたちになります。巡回しているエンジニアはネイティブとノンネイティブの英語話者が混在しているので、リスニング難易度に個人差はありそうですが、状況的にハンズオン画面を見ながら質問したり、オンライン翻訳での筆談するなどの手段を取ることも可能なため、コミュニケーションでつまずくことは少ないでしょう。ちなみに私が参加した"Turn your iPhone into an IoT device and visualize sensor metrics "のセッションではハンズオン中に英語で質問を投げかけたところ、日本語で返答されました(笑) 先方はまだ20代の台湾のエンジニアの方だったように思いますが、一体何か国語操れるのでしょうか。優秀過ぎますね。

workshop teacher
英語はもとより日本語も使いこなすWorkshop講師

Theater Session

リスニング難易度☆☆☆☆☆

最後に取り上げるのは Theater Sessionです。これはかなり大きめの会場に巨大ディスプレイがいくつか設置されており、そのディスプレイごとに異なるセッションの動画を流しているといったスタイルになります。参加者は各ディスプレイの前に整列している椅子に座って、その映像と連動した音声がながれるヘッドフォンをしながらセッションを視聴するかたちになります。このタイプのセッションについては隙間時間に少し参加した程度でフルでは参加しておりませんが、その範囲でレビューしてみたいとと思います。まず、話すスピードや話し方といった面では Breakout Session とほぼ同程度と考えてよいでしょう。ただ、こちらはヘッドフォン越しというのと、(画面越しなので)参加者とのやりとりなどが一切発生しないことからBreakout Session よりは内容にフォーカスして聞けるかなといった印象を持ちました。Breakout Session と異なる点としては、Theater Session のアーカイブ動画は本ブログ執筆時点でアップロードされている形跡はなく、現場の音声もヘッドフォンで聴くことになるため、音声文字起こし作戦が使えません。よって現場でのインプット一発勝負ということで、ある意味難易度高めのセッションと言えるかもしれません。

まとめ

re:Invent では自分が受けたセッションはわずか6種類でしたが、やはり現地に参加して生の英語でインプットする情報は何ものにも代え難いものがありました。とはいえ、英語ができないと参加する意味がないなんてことはなく、同時通訳の他、音声文字起こし、翻訳ソフトなどが充実しているので、英語がそんなに自信なくても十分にre:invent で充実したインプットをすることは可能でしょう。

今回参加したセッション以外にも、 AWS GameDay、AWS Jamなどの Gamified Learning と呼ばれるセッションでは、参加者同志が協力して問題解決を行うといった内容のものがあり、英語を聴くだけでなく、よりインタラクティブに英語を使って参加するようなセッションもあります。また、PeerTalk Loungeと言った re:Invent に参加したエンジニア同士が交流するスペースなどが用意されているので、そこに参加して英語で各国のAWS事情を聴くなんてことも現地参加の醍醐味と言えるでしょう。 ということで、英語力を磨けば re:invent の魅力は無限大ですよという言葉で締めくくりたいと思います。